第24回 『彩色設計図』にみる清水組の建築作品
『彩色設計図』は、1905(明治38)年から1923(大正12)年にかけて、清水建設の前身である清水満之助店および合資会社清水組が手掛けた代表的な設計施工の建築作品 347件/632点の図面です。
B4判よりやや小型のワットマン紙に、烏口と面相筆によって墨を入れ、水彩絵具で彩色を施した精緻な手描きの設計図で、東京をはじめ、北海道、富山、大阪、高知、山口、福岡など、全国各地のさまざまな用途(下表参照)の建物が描かれています。
室内装飾の様子や家具、照明器具を描いた図面を除いて、縮尺はすべて1/200に統一されており、取り壊され現存していない建物の当時の姿を色彩情報とともにうかがい知ることができる貴重な資料です。
これらの図面は、設計部門の前身である製図場の技師(設計者)や技手(技師の下で設計を行う者)、製図工たちの手によって描かれました。
当社は、1886(明治19)年、工部大学校造家学科卒業(現・東京大学工学部建築学科)の工学士坂本復経を初代技師長として招聘し、他社に先駆けて製図場を発足させました。
初代・二代清水喜助からのものづくりに対する真摯な姿勢を継承し、設計・施工一貫の請負体制確立にいち早く取り組みます。
当時最先端の建築技術や構造を積極的に取り入れるとともに、優秀な人材の獲得と養成にも力を入れ、製図場の体制を確立。後に「技術部」の呼称を経て、1916(大正5)年に「設計部」となりました。
本図面は、2011(平成23)年6月、「明治後半期から大正期に日本を代表する建設会社が手がけた建築作品を多数収録する彩色設計図集は、我が国近代建築史上に貴重な資料であり、学術的価値が高い」として、 国の登録有形文化財(美術工芸品「歴史資料」)に登録されました。
技師たちが描いた線の一本一本、一筆一筆には、次の世代へと伝えたい技術、そしてものづくりにかけた熱い想いが込められています。
『彩色設計図』に描かれた建物の用途
用途 | 建物 | 図面 |
住宅 | 45件 | 82点 |
銀行 | 105件 | 163点 |
会社・商店・事務所 | 80件 | 154点 |
学校・図書館・病院 | 24件 | 43点 |
公共会館・娯楽場・旅館・料理店 | 19件 | 43点 |
工場・倉庫 | 50件 | 82点 |
室内並家具電燈 | 24件 | 65点 |
竣工 | 1921(大正10)年 |
所在地 | 東京市芝区(現・東京都港区) |
設計者 | 当社(田中実) |
竣工 | 1914(大正3)年 |
所在地 | 富山県高岡市 |
設計者 | 当社(田邊淳吉) |