第46回 「聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂」
1869(明治2)年、東京・築地に外国人居留地が設置されると、布教のために数多くの教会やミッションスクールが建設されました。十字架を頂く礼拝堂は、その歴史を物語る数少ない建物です。
東洋一の近代的総合病院
聖路加国際病院は、米国聖公会の医療伝道の一環として1901(明治34)年に設立されました 。設立者であるルドルフ・B・トイスラーは大規模病院計画を構想し、皇室や日米政財界からの支援と募金活動により、1933(昭和8)年に中央病棟と東翼の看護大学校舎を完成させます。
一般医療、予防医学、公衆衛生、看護教育を行う、米国式設備の整った東洋一の近代的総合病院の誕生でした。
初めに設計を担当したA・レーモンドとB・フォイエルシュタイン※1は、直線で構成されるモダニズム建築を採用し、引き継いだJ・V・W・バーガミニ※2はそこにテラコッタ装飾やアールデコ装飾を加えます。大きなガラス窓と温かみのある室内装飾により、快適な病室が実現しました。
当社は、同じく米国聖公会が設立した立教大学での仕事が評価され、本病院の施工を受注。工事は1936(昭和11)年の礼拝堂竣工まで約10年に及び、昭和恐慌で経営不振に苦しむ当社を救うことになります。
※1A・レーモンドとB・フォイエルシュタインともにチェコ出身の建築家。来日後、レーモンドは自身の設計事務所を開設、後にフォイエルシュタインが事務所に加わり、東京女子大学の設計で協働している。
※2J・V・W・バーガミニ米国人宣教建築家。関東大震災後に施設復興の使命を帯びて来日。立教女学院の講堂や聖マーガレット礼拝堂を手掛けている。
祈りの場であり続けるために
病棟中央の尖塔の背後にある礼拝堂は、バーガミニによりリブ・ヴォールト※3やステンドグラスを持つ本格的な近代ゴシック様式で設計されました。
荘厳な堂内にステンドグラスから色彩豊かな光が差し込みます。竣工時、病棟の3~6階は礼拝堂のバルコニー席とつながっており、「神の許での医療」を体現していました。
※3リブ・ヴォールトゴシック建築でよく用いられたアーチ天井。
2018(平成30)年に天井材の破片が落下したため、2023(令和5)年に当社設計施工で改修工事を実施。
リブ部分に耐震化を施し、天井材は一部を残して石こうボードとし、全体と調和した塗装で仕上げています。ステンドグラスとバラ窓は破損部分の補修を行い、内側に落下防止ネットを設置しました。
安全性に最大限配慮した礼拝堂は、これからも祈りの場として使われ続けます。
建物概要
- 所在地
- 中央区明石町10-1
- 構 造
- SRC造 B1-7F-PH3
- 延床面積
- 6,696m2
東京都選定歴史的建造物