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「ヘリテージ」

第41回 「明治記念館本館」

明治神宮野球場があることで知られる明治神宮外苑。その一角に明治初期の外交儀礼施設として現存する「明治記念館本館」があります。歴史ある本建物に、当社は大正期から携わってきました。

明治記念館本館 外観
明治記念館本館 外観

彩り豊かな歴史を有する建物

明治記念館本館は、1881(明治14)年、赤坂仮皇居内に明治天皇の迎賓施設「御会食所」として建設されました。設計は、皇室建築を多数手掛けた木子きこ清敬きよよし、施工は宮内省内匠たくみ寮直営によって行われました。木造平家建、瓦ぶきの御所風建築ながら、内部は板敷きで、じゅうたんや黒漆塗り木製枠の暖炉、ガラス扉といった洋風の要素を取り入れた、明治という新しい時代を感じさせる和洋折衷の造りをしています。

1888(明治21)年に大日本帝国憲法草案審議の御前会議の場となった建物は、その後、憲法制定の功労者である伊藤博文に下賜され、東京府下荏原郡大井村(現在の品川区大井)に移築。「恩賜館おんしかん」と名付けられました。

明治神宮外苑造営を機に、現在の場所に移築されたのは1918(大正7)年。この移築を当社が手掛けました。「憲法記念館」と称され、皇室関係の行事にのみ使用されていましたが、1947(昭和22)年に「明治記念館」となり、結婚式場・宴会場として一般に公開されました。

木子清敬(1845~1907)明治期の建築家。明治宮殿や御用邸造営などに携わる。平安神宮の設計も手掛けた。

文化財的価値を損なわない改修工事

当社は、2017年度から行われたメインホール「金鶏」と「エミール」を中心とした改修工事にも携わりました。金鶏は御会食所、エミールはコーヒーの間として、明治期には宮中外交の主要舞台となっていたホールです。

工事は、古写真や古図面などに基づき、大正の移築時の形状に近づける方針の下、文化財的価値を損なわぬよう当初部材を極力残して進行。併せて、縁側の手すりをガラスにし、窓や出入口の建具を外観に即したものに変更するなど、施設の使い勝手と外観保持の両立も図りました。

竣工翌年の2020(令和2)年、建物の歴史的、建築的価値が認められ、東京都指定有形文化財に指定されました。

明治期宮廷建築の姿をとどめる会場「金鶏」
明治期宮廷建築の姿をとどめる会場「金鶏」
手すりをガラスにすることで移築時の姿に近づけたテラス
手すりをガラスにすることで移築時の姿に近づけたテラス
建物概要
所在地
港区元赤坂2-2-23
構 造
木造
延床面積
539.75m2